従業員と企業の社会的信用を守るために

残念なことですが、現在の日本では数多くの労働災害が発生しています。労働災害は企業の社会的信用を失墜させるだけではなく、従業員の人生にも影響を与えます。不幸な事態を防ぐためにも、労働安全衛生には配慮する必要があるでしょう。

労働災害事例集

過労自殺:遺族が勤務先と国提訴 「労基署が適切指導せず」 (2/22)

東証1部上場のプラントメンテナンス会社(横浜市)に勤務していた男性(当時24歳)の過労自殺を巡り、遺族が22日、同社と国に総額約1億3000万円の賠償を求めて東京地裁に提訴した。「会社と労働組合の労働協定が極度の長時間労働の要因となった」としたうえで、「協定を受理した国が適切な指導監督を行わなかった」と主張している。

原告側代理人によると、民間の過労死を巡って国の監督責任を問う訴訟は初めて。

訴えによると、男性は07年4月に入社。千葉事業所に配属されて現場監督などをしていた。人手不足や工期遅れなどから長時間労働を強いられ、08年1~8月の時間外労働は月平均約123時間で、7月には200時間を超えた。男性は精神障害を発症し、同年11月に自殺。昨年9月に労災認定された。

会社と労組は、月150時間(納期が切迫している時は月200時間)までの時間外労働を認める協定を結んでいた。遺族側は「労働関係法令に違反している」と会社の責任を問うとともに、協定を受理した千葉労働基準監督署についても「会社や組合に是正を求めることなく受理し、適切な指導監督を行わなかった」と主張している。

千葉労基署は「訴状を見ていないのでコメントできない」としている。同社総務部は「訴状が届き次第、内容を検討して対応したい」とコメントした。
(毎日新聞)

◆解説

民間企業の労働者の過労死や過労自殺を巡って、労働基準監督署(国)の監督責任を問う訴訟は初めてということです。

36協定における延長時間には、限度時間(1ヵ月45時間、1年360時間など)が設けられておりますが、臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない”特別の事情”が予想される場合には、「特別条項付き協定」を結べば、限度時間を超えて労働時間を延長時間とすることができます。

しかし、月200時間の時間外労働というのには無理があります。

本当に”特別な事情”があったのか、事業所が長時間労働を放置して労働時間管理を怠っていなかったのかが争点になると考えられます。

今回は労働基準監督署の監督責任が問われる訴訟で、特別条項付36協定のあり方や今後の労働行政にも影響を与える可能性もあり、注視する必要がありそうです。

◆関係法令

一般に36協定は労務管理部門が担当し、安全衛生担当者は直接タッチしないことが多いと思いますが、最低限の知識は必要であり、その要約を以下に記します。

「労働基準法」では1週40時間・1日8時間(法定労働時間)を超えて働かせてはいけないことを定めています。

法定労働時間を超えて働いてもらうためには、労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数を代表する者との書面による協定が必要で、これを労働基準監督署に届出ることが必要です。

このことについて労働基準法第36条に規定されていることから「36協定(サブロク協定)」と呼ばれています。

36協定を届出しないで、1週40時間・1日8時間(法定労働時間)を超えて働かせると、労働基準法違反となって6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられます。

しかし、特別の事情が予想される場合には特別条項付き36協定を締結することにより、一定期間についての延長時間は限度時間を超えることができます。

平成16年4月1日より、特別条項付き36協定を締結する場合の「特別の事情」が今まで以上に制限され、「臨時的なものに限る」ことを明確にする改正が行われました。

基準は次の通りです。

・「臨時的なもの」とは、一時的又は突発的に、時間外労働を行わせる必要のあるものであり、全体として1年の半分を超えないことが見込まれるものを指すことになります。また、「特別の事情」についてできる限り詳細に協定を行い、届け出る必要があります。

従って、具体的な理由を挙げずに、「業務の都合上必要なとき」又は「業務上やむを得ないとき」と定める等、恒常的な長時間労働を招く恐れがあるもの等については、「臨時的なもの」とは認められません。

(臨時的と認められる例)

1.予算、決算業務

2.ボーナス商戦に伴う業務の繁忙

3.納期のひっ迫

4.大規模なクレームへの対応

5.機械のトラブルへの対応

・「特別の事情」は、「臨時的なものに限る」ことを徹底する趣旨から、特別条項付き36協定には、1日を超え3箇月以内の一定期間について、原則となる延長時間(36協定で定める労働時間の延長の限度)を超え、特別延長時間まで労働時間を延長することができる回数を協定するものとし、この回数については、特定の労働者について特別条項付き36協定の適用が1年のうち半分を超えないものとします。

なお、建設業は労働時間延長の限度基準については適用除外になっており、このことも今回の問題を招いた一因ともいえるかもしれません。

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